江戸時代の絵師、曽我蕭白(そが・しょうはく)が描いた「雲龍図」を、既にご覧になっただろうか。
2012年3月から始まった東京を皮切りに、国内4カ所を巡回している「特別展 ボストン美術館 日本美術の至宝」という展覧会の目玉の1つだ。現存する形でも、ふすま8枚にわたって巨大な目とひげを持つ龍が雲の合間を泳ぐ姿が描かれている。鼻とひげの部分だけでも、ふすま一枚からはみ出す大きさで、その大胆な構図と迫力は、本当に一見の価値がある。
これまた素人目にもその凄さがひしひしと伝わってくる長谷川等伯の「龍虎図屏風」と併せて見ると、興味をますますかきたてられる。特別展はこの2月は福岡県太宰府市の九州国立博物館で実施中で、4月からは大阪に移動する予定である。
私自身、昨年の東京国立博物館での展覧会を、何とか時間をひねり出して見てきたのだが、東京だけで来場者は40万人以上を数えたという。
明治期以来、遠く離れたボストンの地で、よくもまあこれだけのものを集めてきた、という点にも驚かされる。蕭白の「雲龍図」も、明治になって米国人医師のビゲローが来日して収集した約4万1000点のうちの1つだとのこと。
- 1911年ボストン美術館に収められたときから、襖から剥[は]がされた状態で保管されてきた巨大な龍。今回の修復作業により公開が可能となった。伝来は明らかでないが、寺院の襖かと考えられる。34歳の作。
- 中国唐代の隠者龐居士とその娘霊昭女を描いたとされるが、その好色的な眼差しは、女性の脛に見とれて法力を失った久米仙人とも見える。曽我蕭白の皮肉な眼差しが読み取れる。制作年のわかる蕭白最初の作品としても貴重。
- 一陣の風の中で剣を持つ中国の仙人陳楠[ちんなん]が、池に潜む龍を追い出して天の水門を開かせ、旱魃[かんばつ]を救う場面とされる。龍は黒雲となって画面の上に勢いよく昇る。水は激しく渦巻き、風に吹き飛ばされた従者の表情も面白い。
- 廬山に隠棲した東晋[とうしん]の僧慧遠[えおん]のもとを訪れた陶淵明[とうえんめい]と陸修静[りくしゅうせい]。話に夢中になった
慧遠が俗世に通ずるとして渡らぬと決めた橋を越えたことに気付いて3人で大笑した場面が描かれる。蕭白にはめずらしく穏やかな画風がうかがえる楽しげな作
品。
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