日本橋の老舗、にぎわい再生へ挑む 若者向け新店や実演
2010年10月28日9時31分
開店準備を進めるにんべん「日本橋だし場」の店員=東京都中央区の「コレド室町」
店内で刃物の研ぎ方の実演をする木屋の社員=東京都中央区の「コレド室町」
日本橋(東京都中央区)の再生に向け、江戸時代創業の老舗(しにせ)が挑戦を始めた。かつお節の「にんべん」はだしを売り物にした飲食店を開き、刃物の「木屋」は研ぎを実演する。老舗の後継者たちは「若者や外国人に足を運んでもらい、にぎわいを取り戻したい」と願う。
「だしの利いたけんちん汁はいかがですか」。東京メトロ三越前駅と直結する地に28日開業する商業施設「コレド室町」。1階の店舗で、1699(元禄12)年創業のにんべんの社員が接客の練習に懸命だ。創業311年にして初めて飲食店を手がける。
かつお節一筋の同社だが、本店を訪れる客は高齢者に偏っていた。総合企画部次長の杉井剛さん(55)は「健康志向の若い女性がターゲット」。メニュー は、削りたてのかつお節をかけたご飯やだしをきかせた汁物。気軽に入れるバーのようにと、店名は「日本橋だし場(バー)」にした。
にんべんの隣に本店を移す木屋も1792(寛政4)年の創業。入ってすぐの場所に、熟練社員が刃物の研ぎ方を実演するスペースを設けた。昨年8月に9代目になった社長の加藤欣也さん(55)は、「この店で、道具を大事にする日本の伝統文化を伝えていく」と意気込む。
今は少ない海外からの観光客にも期待する。社員の中山英俊さん(39)は、根付け師と組んだ作品がフランスやロシアで紹介されるなど、ナイフアーティス トとして海外でも知られる。本店で作品を展示即売するとともに、中山さんが定期的に接客して「日本の刃物」を広める計画だ。
老舗が動き出したのは、日本橋の低迷が背景にある。バブル景気に沸いた後は客が減り、1999年には大手百貨店「東急百貨店日本橋店」が閉店。銀座や丸の内にブランド店や格安店が進出したのと対照的だ。
日本橋の現在の橋は来年が架橋100周年。国が補修工事を進めている。地元では、橋を生かした街づくりの検討が進み、橋をまたぐ首都高速道路の移転を求める声も強い。
再開発を進める三井不動産の岩沙弘道社長(68)は「首都高は建設後50年近くたち、撤去や移転は現実的な話になった。日本橋は三井の発祥地でもあり、街の再生に向け、地域や行政と取り組んでいく」と話している。(小林誠一)
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〈日本橋〉 江戸幕府が開かれた1603(慶長8)年に完成し、五街道の起点となった。江戸時代は「三井越後屋呉服店(現・三越)」や「白木屋(現・東 急百貨店)」が生まれ、一帯は日本の経済の中心だった。石造アーチの現在の橋は1911(明治44)年の完成。東京五輪前には橋と交差する形で首都高速道 路がつくられた。地元など複数の街づくり団体が現在、首都高の移転を求めて活動している。
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