2011年7月28日 星期四

日本美術にみる「橋」ものがたり

http://www.mitsui-museum.jp/

三井記念美術館


日本美術にみる「橋」ものがたり

2011年7月23日10時18分


■橋が結ぶ夢想・視点の反転

 何かにちなむ展覧会は、その何かの方が主目的になり、魅力を欠いてしまうことがある。この特別展は、今の日本橋の架橋100周年を記念したもので、客観的には土木構築物である橋を主役に据えた企画。だが実際は、豊かな内容を備えている。

 展示は、橋を描いた工芸品から始まる。その中に「志野茶碗(ちゃわん) 銘橋姫」(桃山時代、東京国立博物館蔵)など志野茶碗が3口。いずれも胴に、ご くごく簡単、素朴に反り橋らしき曲線が引かれている。滋味豊かで文学作品と関わるが、なぜ茶碗に橋なのか。続く展示を見るうちに理解が進む。

 例えば二河白道図や伊勢参詣曼荼羅(さんけいまんだら)などが並ぶ「神仏の橋」のコーナーでは、橋を渡る度に俗から聖へと空間が階層化されていることが分かる。此岸(しがん)と彼岸という異なる領域をつなぎ、一方で差を明確にしている。

 伊勢物語の八橋といった文学に登場する橋を描いた屏風(びょうぶ)などが紹介された後、展示は「諸国の橋」に移る。すべて江戸時代の作で、橋が主役となっている。

 広重にも橋を中央に据えた作品があるが、まあオーソドックスな風景描写。北斎の「百橋一覧図」や「諸国名橋奇覧 足利行道山くものかけはし」(ともに展 示は8月7日まで)になると絵が橋から構想されている。前者は橋をつないでどこまで至れるかといった夢想の跡だろうし、ありえないほどの渓谷にかかる後者 は「天空の橋」。アニメなど現代の表現にも通じる。

 あるいは「大坂市街図屏風」(17世紀、大阪城天守閣蔵、8月7日まで)、部分。城を囲む堀に放射状にかかる橋が権力を際だたせる。橋に髪結いらが見えるのは、どこにも属さぬ世俗の境界の自由さゆえか。橋から街を眺めるという視点の反転をはらんだ都市図だ。

 こうして、茶碗に描かれた線に託されたものもほの見えてくる。彼岸への思いか、日常からの逸脱や転換か、夢への懸け橋なのか。そこにあるのは、ごく簡単な曲線を象徴的に橋に見立て、掌(たなごころ)に収めてみたい心持ちだろう。(編集委員・大西若人)

 ▽9月4日まで東京・日本橋の三井記念美術館。8月15日を除く月曜休館。展示替えあり。




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